2011/07/01

デンドロビュームの7月の管理

7月になりました。梅雨が明けると真夏の強烈な光線にデンドロビュームの葉や茎が美しく輝き、洋ラン愛好家ならではの醍醐味が味わえる楽しい季節となりました。


つやつやと輝くデンドロビュームの葉



新芽の生育も最盛期に入り、早いものでは止め葉が確認できるものも出てきます。バルブは下の方から徐々に充実していき一人前のバルブへと変化していきます。
冬期に無加温で栽培をした株も、新芽や根にさらに勢いが増し、気持ち良く伸び続けます。


デンドロビュームの7月の管理を簡単にまとめてみました。





置き場所について


デンドロビュームは、熱帯地域が原産のため、高温を好む植物と思われがちですが、自生地はタイの北部から、ミャンマーやインドのヒマラヤに連なる海抜1000メートル以上の高冷地です。
その環境は朝夕はさわやかで気持ちが良く、昼間も光線は強いが意外に涼しく、熱帯であることを忘れさせるほどです。
これらの諸条件から判断しても生育のための適温は日中26から28度程度あればよいわけです。
7月に入ると30度を越える気温が続く日本では、むしろ生育を鈍らせてしまうことになります。







ひと夏を直射光線下で育てる方もいらっしゃるようですが、丈夫な植物ですから高温にも耐えることが出来ますが、より良い生育、健全な生長を望むのであれば、この時期は特に風通しの良い涼しい場所に置き、高温の続くような時は棚下や周囲に散水することで涼しくするような工夫が必要です。
夏だけ室内に置いいるという方もいらっしゃいますが、こちらは光線不足、風通しが悪いなどの点からおすすめできません。







光線について



デンドロビュームは日光を好む植物であることは既出のとおりでありますが、高温の時期に強光線を当てる場合には常に風通しが良い状態にあることが必要です。






無風状態が続いたり、鉢の中に水が不足した状態で強光線にさらされると、あっという間に葉焼けを起こしたり、高温障害で茎を痛めることになります。



デンドロビュームの葉焼け
葉焼けの症状


7月、8月の気温の高い時期の栽培には、遮光ネット、寒冷紗などで30から40%程度の遮光のもとでの栽培が必要になります。ホームセンターで入手が可能ですので試してみてください。
加えて常に風通しがよい環境をつくってやる事を心がけます。






水やりについて


高温期でよく乾燥する季節です。加えて生育期であり、鉢の中が乾いた状態で水の不足が続くとデンドロビュームの生長の妨げにもなります。

特に水苔で素焼鉢に植えられたものは乾きやすく、注意が必要です。朝水やりをしたからと安心していると昼頃には完全に乾燥し、生育が鈍ったりバルブの充実の妨げになったりするだけでなく、高温障害 や葉焼けなどの害を生じる場合も考えられます。
高温時に水が不足すると、株が脱水症状を起こし衰弱してしまうのです。水分の補給が充分できていれば、気温 が30℃や場合によっては40℃近いような高温になっても、デンドロビュームは蒸散作用で植物自身の温度を調節し、高温障害は起こしにくいものです。

ただし、真昼の高温時に水をやると、水滴が新芽の展開している葉先に溜まり、短時間でお湯のような高温になって株を傷め、病気を発生させる原因にもなります。
7月、8月の高温期の水やりはなるべく朝方または夕方の涼しい時間帯に行なうよう心掛けましょう。 
 

水浸状の病斑が徐々に拡がってきます






肥料について


すでに油粕などの固形肥料を施している場合には、あらためて施肥の必要はありません。
液体肥料であれば7月も施肥は可能ですが、そろそろ茎葉の色や葉の様子にも気を配る必要があります。
あまりにも茎葉が濃く葉が大きく垂れ下がっているような場合には光線不足だけでなく、窒素過多の恐れがあります。デンドロビュームは生育の中期以降に窒素成分を多く含んだ肥料を与えすぎると花芽分化が妨げられ、せっかく生長した茎に花が付かず、高芽ばかりが出ることになります。即効性の液肥の場合であっても来春開花させるつもりであれば、7月いっぱいで施肥を打ち切る必要があります。 
※少苗、中苗など開花さる予定がない場合は継続しても大丈夫です。


 窒素過多、光線不足になると下の写真のような状態になります。
 
窒素過多、光線不足のデンドロビューム
茎は細く、葉が大きく垂れ下がる


光線、水やり、肥培管理が非常にバランスのとれた状態の苗。



非常にバランスのとれたデンドロビューム
株元から瑞々しく太り楽しみな株


開花株の場合、秋になってやや茎葉が色褪せているくらいの方が花はよく咲きます。

万一、現在の茎葉の色が濃すぎて窒素過多が不安な場合は第一リン酸カリの1000~2000倍液を施すのも有効です。
茎や葉の色が淡くなり窒素過多の現象が解消され、正常な生育へ戻すことができるでしょう。
第一リン酸カリは「ホスポン」という商品名で園芸店やホームセンター等で販売されています。
http://item.rakuten.co.jp/dendro/10000578/ 




病害虫について


春から増えてくる病害虫には引き続き注意します。高温状態が続く季節にに変わり、病気や害虫の種類は更に増えてきます。
高温乾燥状態を好むハダニが密集した葉の裏に発生ことがあります。ハダニが大量に発生した場合には葉の裏から汁を吸われて、表面に艶がなく白くなってきます。
間隔を開け、風通しよくすることで発生を抑えます。発生の見られる葉の裏を濡らしたティッシュで直接拭き取ることでダニそのものを減らすことが出来ます。また、水やり時には株、葉の裏、表にしっかりと水をかけてやり、洗い流して発生を予防できます。


デンドロビュームに発生したハダニ
ダニの発生した葉の裏



また、高温で植物が弱っているときに出やすいのが炭そ病です。
気温の高いこの時期にデンドロビュームが弱ったときに出やすい病気です。


炭そ病が発生したデンドロビュームの葉
炭そ病が発生したデンドロビュームの葉


ダイセン、ダイファー、トップジンMなど有効な殺菌剤がありますが、発生を防ぐためにはまずは栽培環境を整えてやることも大事です。風通しの良い場所に置く、寒冷紗で遮光をしてやるなどご自身で出来ることをやってあげてください。





 植え替え


高温で生育が鈍る時期です。そろそろ植え替えは控えたほうが良いでしょう。植え替えは4月から6月くらいまでが最適です。
あまり遅い時期に植替えをすると冬までにしっかりと鉢の中に根が回りません。
根張りの悪い株は冬場に水やりの失敗をしたり、その結果、根を痛めて開花時に良い花が咲かなかったりします。
どうしても必要な場合を除いてはなるべく控えたほうが良いでしょう。

デンドロビュームの植え替えの方法はこちらのページを参考にしてください。


デンドロビュームの植え替え(準備すること)


デンドロビュームの植え替え(ヤシガラで植える) 


デンドロビュームの植え替え(水苔で植える)